2021/02/20
高血圧で来院される方に「血圧の薬は飲み始めたら一生続けないといけないのでしょうか?」とよく質問されます。
先ず理解していただきたいこととして、高血圧の薬(降圧剤)は、「治療薬」でもありますが「予防薬」でもあるということです。
高血圧の治療の目的は、血圧の値を単純に下げるだけではなく、将来、高血圧などをリスクとして動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞、腎不全などの病気を発症するのを予防することが目的となります。高血圧の治療を適切な時期に始めることが出来れば、働き盛りの年齢で脳卒中や心筋梗塞を起こして、突然死したり、後遺症が残ることを防げます。
風邪薬は、風邪が治ったら薬をやめることができますが、降圧剤は、高い血圧を下げる作用があるだけで、高血圧自体を治す薬ではありません。降圧剤を服用すれば降圧剤の効果で血圧は下がりますが、それで「治った」と思って薬の服用をやめてしまうと、結局またすぐに元の高い血圧に戻ってしまうのです。つまり、ある程度は継続して飲み続ける必要がある薬なので、「一生やめられない」と思われてしまうのかもしれません。
「飲み始めたらずっと」という間違った理解のために、血圧がとても高くて内服が必要な状態であるにも関わらず、「もう少し生活を改善してから」「もう少し様子をみます」と言って、何年も内服することに躊躇される患者さんがおられます。そうなると治療が遅れてしまい、その間にも動脈硬化がどんどん進行していってしまいます。脳卒中や心筋梗塞を起こしてから後悔しても元の体には戻りません。高血圧を発症したら、薬の力を借りながら血圧を安定させたうえで、同時に生活習慣を変える努力を行っていくことが大切です。
逆に、「血圧の薬を飲んでいるから大丈夫」と思って、好きなものを好きなだけ食べて飲んで、運動もしない。という今までと変わらない生活を続けていると、薬の量が増えるだけでなく、糖尿病、高脂血症という他の生活習慣病もどんどん併発していってしまいます。
つまりは、「薬の頼り方」を間違えないこと。
バランスの良い食事、塩分を減らして、適度な運動をし、肥満にならないこと。積極的に生活習慣を変えることで降圧が上手くいき、実際に高血圧の薬を飲まなくてよくなる方や、薬の量が減る方がいらっしゃいます。いずれにしても大切なのは、生活習慣を変える努力です。
まずは自己判断はせず、医師にご相談下さい。
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